カポとキーのはなし
ギターやウクレレで使えるカポって、便利だけど、カポを使うことの弊害もあるよね。
カポを使って、オープンコードのフォームだけで弾いていると、
常に移調をして原曲とは違うキーで考えてるわけだから、
CとかGとかの限られたキーにしか対応できていないことになる。
むかし所属していた教会のバンドに、
フロントマンでアコギを弾きながら歌うシンガーの若い男の子がいて、
その子がある演奏の本番の日に、
カポを持ってくるのを忘れたらしく、
顔面真っ青になりながら、
「Akiさんカポ持ってないですか?」って、僕に聞いてきたんだよね。
その日は確かボーカルの声域に合わせて、
D♭キーの曲を演奏することになってたんだけど、その子はカポがないからコードが押さえられず、演奏ができないと。譜面も自分用に1カポでキーCに移調したものを用意していたらしい。
僕はそのバンドではエレキギター担当だったので「カポは普段使わないので、持っていない」と伝えると、
その子はひどく焦ってた様子だったので、
「でもギターのチューニングを半音下げたら、Dのフォームで弾けるよ」って教えてあげた。
そうしたら、安心してた様子だった。
確かそれでなんとか本番は解決した記憶がある。
やっぱりバンドで演奏するとなると、
一人で弾き語りをする時とは勝手がちがうし、
そもそもカポというのはギター独自のものだから、
カポをつけたキーでしか考えることができなかったら、
厳密には他の楽器パートとは違うコードを追っていることになるよね。
実音や色んなキーで考えられるような着眼点を持てるように、アドバイスしてあげたかったけど…。(例えば、ダイアトニック・コードやCAGEDシステムについて学ぶとか)
「僕のレッスンに来れば、レクチャーさせていただきますよ」なんて話には至らなかったけれども、
その数年後彼とは会う機会がなくなってしまった。
彼は果たして、その後実音のキーに対応できるアコースティック・プレーヤーになれたのだろうか…。
もはや知る由がない。
まあ、でも確かにギターにとって#とか♭のキーって、オープンストリング(開放弦)が使えないから、難しいのかもしれないね。
でもバンドアンサンブルなどに関わっていきたいのだったら、
初心者のうちはしょうがないにしても、
せめて#とか♭がついてない、
メジャースケールから派生するCDEFGABの7つのメジャーキーぐらいは、
考えられるようになっておいたほうが良いと思う。
でないと、リハーサルや本番で万が一カポを使えないような状況になった時や、他の楽器パートの人から#や♭をふくむ譜面を渡された時に、その場ではまったく対応できないといった状態におちいることになるかもしれない。