初心者から中上級者への境目:楽器を持つ=表現者になる。
楽器の演奏の初心者→中上級者への境目は、究極的には「聴き手のことを意識した演奏にシフトしていけるかどうか」にかかっているんじゃないかと思っています。
ちょっとわかりにくい表現かもしれませんし、言葉でも表現しにくいのですが、楽器を持った瞬間、どんな人でもその瞬間から「あなたは表現者になる」ということです。
「表現者になっていく」ということは、自分自身がこれまでの人生であったり、音楽に触れたことから得てきた「感動体験の共有」が、そこには発生すると思います。
ステージやテレビに出てくるアーティスト達を見て、「華やかだな」とか「楽しそうだから、自分もやってみたいな」と思うのは、音楽や楽器をはじめるキッカケとしてはもちろん大切ですが(特にメジャーなアーティストたちは、ファンに夢や幻想を売るのが仕事である側面もあるので)、
彼らのやっているようなことを自分も少しでも再現してみたいと思うなら、そのためにはどういったプロセスを踏めば達成できるのかといった指標も、ある程度持っておくといいでしょう。
なぜなら、ステージに立っている人達にも、その舞台裏にはさまざまな苦労や努力もあるからです。
表面的な部分だけをなぞっていると、楽器を弾く熱意も、すぐに覚めてしまうことでしょう。
音楽を奏でる根本的な目的や目標(ゴール)を明確に持っている人ほど、上達していく傾向が強いと思います。
なかには、「自分は単に趣味でやっているだけなので、一人で楽しめればいい」というかたも見受けられます。
しかし、音楽は「世界の共通言語」といわれて、コミュケーションに例えられることがあり、やはり共演者がいてからこその音楽だという見方もあります。
単独でやっているとなかなかモチベーションが続かないこともあるし、ある程度上達すれば、「他者と分かち合いたい」という欲求も必然的に生まれてくると思います。
ちなみに「聴き手に対して意識が向かない初歩の演奏段階」といっても、他のミュージシャンとの共演経験や、オーディエンス(聴衆)の前での発表経験が全くない人は、楽器を習い始めてからわりと時間がたっても、自分自身の目のまえの演奏のことだけに集中が向きがちな傾向があります。
他のパートのミュージシャンと共演すると、自分の演奏ばかりでなく、他のミュージシャンたちが演っていることにも関心が向くようになっていきますし、
仮にソロにしてもバンドにしても、やっぱりオーディエンス(聴衆)の前で演奏すると、それまで自分の中だけで完結していた世界がひらけて、視野も変わると思いますよ。
こうしてみると、ステージというのもチームプレイですね。
そう、「自分の周りにいる人たちと、この感動や体験を、これからどのように分かち合っていこう」といった感情が湧き上がってくるのです。