日本人が苦手とするリズム
生徒さんから、ときどき「私はリズム音痴で、リズム感が全然なくて…」なんて、ご相談を受けることがあります。
私自身はどうやってリズム感を養おうとしてきたかといいますと、まず私の場合は中高の学生時代に、ダンスを習った経験(ジャズやロックやポップ、ヒップホップも少々)がありました。
ダンサーになることを夢見た時期もありましたが、私はもともと身体能力が高い人間ではなく、むしろ運動音痴だったため、素早く踊ることには限界を感じてしまい、結局ダンスは4年ほどでやめてしまいました(笑)。
ギターの演奏はダンスに比べると体全体をあまり動かさないで済みます。指先の細かい動きは、めっちゃ多いです(笑)。
ギターを練習しているうちに、だんだんと色々な音が聞き取れるようになっていき、音楽を楽しめるようになっていったので、自分には楽器の方が合っていると感じました。
ダンスは辞めてしまいましたが、ダンスで養ったリズムやステップの取り方は、楽器を演奏するうえで大いに取り入れることができ、役立ったと思っています。
音楽でリズム感を養いたいという人は、ダンスのステップの一つでも学んでみるのも、手かもしれませんよ。
世界的ダンサーでありパフォーマーであった、マイケル・ジャクソンのワナビー・スターティン・サムシングを後になって聞いた時は、打楽器のように自分の声を操るマイケルのボーカルもさることながら、バックバンドのギタリストのジェニファー・バトゥンが弾いている単音カッティングもむちゃくちゃタイトでカッコいいと感じたのを覚えています。
Michael Jackson - Wanna Be Startin' Somethin'
さらに私の場合、もう一つはアメリカに住んでいた時に様々な人種やジャンルのミュージシャンたちと出会う機会や共演する機会があったことです。
そういったミュージシャンたちと出会ったときに、「この人たちは、明らかに日本人とはリズムの取り方(特に裏拍やシャッフルなどにおいて)が違うな」と、感じさせられた場面が多くありました。
で、例えば黒人の人たちだったりラテン系の人たちのリズムを聞きいっていると、激しく躍動感があり、引き締まったリズムがあることに気付きました。むろんリズムだけではなく、メロディーやハーモニーの解釈のありかたも全く違ったりもするのですが…。
例えば、私はつい先日こんな動画をYouTubeで見つけました。
アフリカ人と思われる人達がパーカッションを叩いている動画ですが、こういった動画を見て音符などの細かいことは理解できなかったとしても、彼らの奏でるリズムがとてもエネルギーと躍動感に満ちたものであることは、誰が聞いても伝わるかと思います。
また、欧米の人たちは若い時からダンスパーティーなどで踊ったりする文化があるので、リズム感が身につきやすいというのもあると思います。これもまた、日本文化との違いですね。
日本で音楽教室をやっていると、習いに来られる方たちが聞いている音楽や関心のある音楽のレパートリーとして、「Jポップしか聞かない」といわれる人たちが、大多数おられる気がします。
私は、そういった方たちが何か大切な点を見落としてしまっている様な気がするのです。
聞く音楽は個人の好みの問題なので、完全に選択の自由ではありますが、自国の文化のものしか好まない、理解しようとしないというのは、何かこう、まるで鎖国のようで許容範囲が狭いような気がするのです。
Jポップですら、元を辿れば西洋音楽や文化の影響も大いに受けて、発展していった経緯があるわけですから。
ギターやウクレレのカッティングや、ベースのスラップにしても、割と駆け出しの学習者たちは、日本人が苦手とする裏拍の取り方でつまづく傾向がトータルで強いように思えます。
私も「さあ、自分のリズム感をいかにして鍛えて、自分の演奏を細かいリズムにも対応できるようにしていこうか」と思った時に、とりわけリズムが主体となっている音楽を聞いてみたり(ブラックミュージックやラテンミュージック、インディアンミュージックなど)、そのうえでドラマーの動きなどを注意深く観察してみたり、音大生だった頃に少しの間ですが副科目でブラジリアン・パーカッション(ブラジルの打楽器)の授業をとってみたりもしました。
あとはもちろん、メトロノームとの練習や、良いリズム隊の演奏者たちと共演することは、大きな学びになりますね。
リズムを感じ取りたい、リズムについて学びたいと思うのなら、本当にエキスパートと言われるものに意識を向け、聞いてみると、理解が深まるかもしれません。